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流体には、液体と気体がありますが、流体科学研究室では、気体を対象として研究をしています。
現在、伊都キャンパス ウェスト4号館 8階 824号室にてゆかいに活動中・・・
九州大学 流体科学研究室
古川 雅人 教授
 私は大学において卒業研究以来,流体機械に関連した研究に従事してきたと言えます.
今でこそ,CFD(数値流体力学)を用いた流体機械の内部流動現象の解明が主なテーマとなっていますが,大学院時代(〜1985年)まではEFD(実験流体力学)により高比速度斜流ガスタービンの開発やタービンスクロールの三次元内部流動解析を行っていました.そのEFDを用いた研究では,5孔ピトー管や単一傾斜形熱線を用いて三次元速度ベクトル等を計測していたものです.1980年頃には,LDVによる内部流れ場の計測も経験し,レーザを用いた非接触式の計測法により流体機械の羽根車内の複雑な三次元流れ場が解析可能になりつつあったことに胸を躍らせたことが懐かしく思い出されます.
 しかしながら,私の大学院時代は,TVDスキームの提案に代表されるように,まさにCFDの急速な発達期でありました.そしてこのCFDに,流体機械の複雑な内部流動を解析する強力なツールとしての魅力を感じ,博士課程修了後から本格的にNavier-Stokes方程式を用いたCFD解析を導入して現在に至っております.

 前置きが長くなりましたが,私が現在手掛けているいくつかの研究内容を一言でまとめると,複雑内部流れ場における非定常三次元渦流れ構造の解明とその制御に関する研究となります.
 少し具体的に述べますと,大規模渦構造の非定常挙動(翼端渦の崩壊や非定常はく離渦など)がターボ機械の不安定流動特性(旋回失速)や空力騒音に及ぼす効果を解明し,その大規模渦構造の制御法を策定して,旋回失速などの異常流動現象の事前検知と回避を,あるいは空力騒音の低減化を可能にし,ターボ機械の知能化を図ることを目指しています.特にここ数年間は,EFD/CFDハイブリッド流動解析により初めて見出すことのできた翼端漏れ渦の崩壊が,旋回失速の初生に深くかかわっていることを示してきました.
 現在は,同じ研究室内で遂行されている実験的研究から得られた旋回失速に関する最新の知見を参考にしつつ,1600万点の計算格子とスーパーコンピュータを用いた羽根車流れの全周にわたる大規模な数値解析から,旋回失速の初生メカニズムを明らかにしつつあります.
旋回失速初生の数値解析

 したがいまして,今私の興味ある流体関連のテーマとしては,まず縦渦の崩壊や不安定性に関する基礎的な研究です.
 これは,渦崩壊の発生限界が解明されなければ,翼端漏れ渦の崩壊に関する知見を設計に反映できないこと,ならびに渦構造と空力騒音との関係を解明するためには,渦が翼面等と干渉する際の不安定性を知っておく必要があることからです.渦の崩壊や不安定性に関する研究は古いテーマではありますが,未解決の問題です.渦の線形不安定問題ですら,1970年代から大きな進展がないようです.

 次に興味のあるテーマは,ターボ機械内の大規模渦構造を制御したいという観点から,流れのアクティブコントロールに関する研究です.これは,言うまでもなく,流体工学にとっては新しいテーマです.また,騒音低減化の観点から,空力騒音に関する基礎的な研究にもたいへん興味があります.これも,流体工学にとっては比較的新しいテーマです.さらに,CFD解析では,計算結果から流体力学的に意味のある情報を抽出できなければ,計算結果はただの大規模数値データに過ぎません.そこで私どもでは,critical point理論に基づいた渦中心の同定や限界流線のトポロジー解析を積極的に取り入れ,ターボ機械内の複雑な三次元渦流れ構造の解析技術を飛躍的に向上させることができました.
しかしながら,上述の旋回失速に関する研究などのように,非定常性の極めて強い現象を解析するためには,非定常三次元(四次元)計算結果から流体力学的に意味のある情報を抽出・解析することが要求されます.この観点から,データマイニングに関する研究にも興味があります.このテーマは,CFDに限らず,大規模数値データからの知識発見として,情報工学分野も含めた学際的な新しいテーマであります.
渦中心の同定と限界流線のトポロジー解析

 以上のとおり,私と流体機械との関係は今までおよそ20年間に及び,私にとって流体機械は研究テーマとして身近にあります.流体機械に関する具体的な研究例を通して考えると,流体機械と流体工学は切っても切れない関係にあることが分かると思います.
上述のように,流体機械の問題解決には,流体工学の古いテーマから新しいテーマまで,さらに学際的な新しいテーマまでを総動員して,取りかかることが不可欠です.言い替えると,流体機械は成熟した分野であるだけに,研究対象となる問題が厄介であるのかも知れません.また,流体機械の内部流動は極めて複雑であるため,実験解析(EFD)のみで問題を解決することには限界があります.かといって,CFDで全て片付くほどCFD結果に信頼性はありません.解析対象と同じ条件あるいは類似の問題に対する実験結果から計算結果の検証を行わなければ,CFDの結果を鵜呑みにできないのが現状です.実験そのものをCFDで置き換えるのではなく,EFDを補完し,流れ現象をより深く解明することを目的としてCFDを活用することが賢明です.すなわち,流体機械の問題解決には,EFD/CFDハイブリッド流動解析が最も有効であるのが現状です.


※ 古川 雅人 教授 : 日本機械学会流体工学部門/メール座談会 掲載文より引用




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