複雑内部流れの非定常三次元解析 (回転翼 列グループ) |
空力騒音解析 (空力騒音グループ) |
遠心型ターボ機械の内部流動解析 (遠心グループ) |
革新的ターボ機械の空力設計 (空力設計グループ) |
風レンズ風車の開発 (風レンズグループ) |
複雑渦流れ場の実験解析 (計測グループ) |
具体的には,実験流体力学(EFD : Experimental Fluid Dynamics)とビジュアル・データマイニングによる 計算流体力学(CFD : Computational Fluid Dynamics) とを融合した,EFD/CFDハイブリッド流動解析技術(EFD解析とCFD解析を併せて実施し,双方から解析を行う)により解析を行っています. ターボ機械内における非定常な三次元渦流れ場は極めて複雑なため,EFD解析のみではこれを完全に計測することは困難です.一方で,CFD解析も万能ではなく,EFD解析結果にてらしあわせた検証を行わなければ,完全な信頼性はありません. そのため現状では,EFDを補完し,現象をよく理解することを目的としてCFDを活用する,EFD/CFDハイブリッド流動解析がターボ機械の解析にとって最も有効な手段といえます. |
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ガスタービンやジェット機に用いられる多段軸流圧縮機において,安全な運転範囲を制限するものの一つに旋回失速(Rotating Stall)という非定常現象があります.これは,局所的な失速域(失速セル)が動翼の回転速度の30〜70% で翼間を伝播する現象であり,圧縮仕事や効率の急激な低下を引き起こすばかりでなく,翼に繰返し荷重がかかり翼の疲労破壊を引き起こす恐れもあります.ここでは,その旋回失速現象について説明します. |
fig.a-1 fig.a-2 fig.a-3 fig.b |
さきほど述べた様に圧縮機の翼と航空機の翼の形状は非常によく似ています.これは両者が同じ原理で使用されているためです.したがって圧縮機の翼にも航空機の翼と同様な現象が生じます.
その現象の1つとして失速(Stall)が挙げられます.図a-1の様に動翼の前後の先端を結んだ直線(翼弦:Chord)と,流れの方向のなす角を迎え角(Attack-Angle)と呼ぶのですが,この迎え角が小さい時は図a-2の様に流れは翼によって流れるのですが,迎え角が大きくなると,流れは図a-3の様に翼から剥がれてしまいます(剥離).この現象を失速と呼んでいます. 圧縮機の場合では流量を減少させていく事で迎え角が増大する現象が起き,同様の失速が生じます.この失速領域は図bの様に翼列に局所的に現われます.この様な局所的な失速領域を失速セル(Stall-Cell)と呼びます.失速セルは特定の場所にとどまらずに翼列の回転と逆方向に移動していき,結果として動翼回転数の30〜70%の速度で回転します.この現象を旋回失速(Rotating-Stall)と呼びます. この旋回失速現象によって, (1) 圧縮仕事や効率の急激な低下 (2) 翼に繰返し荷重がかかることによる,翼の疲労破壊 (3) 顕著な離散周波数騒音の発生 を引き起こす恐れがあります. そのため,旋回失速の初生および遷移過程のメカニズムを解明することは,旋回失速の抑制による運転範囲の拡大やその事前検知などに役立つという点でたいへん大きな意味をもちます. |
EFD解析
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失速セルの挙動を実験的に捉えるには、動翼列(回転要素)内の流動を、要素とともに回転する座標系から計測すると共に、動翼に対する失速セルの位相についても考慮する必要があります.
しかしこれを満足する計測は容易ではなく、過去行われた他の実験的研究においても、旋回失速の初生及び成長のような過渡的変化における内部流動を詳細に述べたものはなく、その詳細については不明でした. これに対し私たちの研究グループでは、周期的多点抽出法により動翼に同期したデータを収集し、そこから得られたデータに対し,失速セルに同期したデータをアンサンブル平均する「二重位相固定法(Double Phase Locked Measurement)」を開発しました. これにより,旋回失速時の渦流れ場における内部流動測定を行うことを可能としました. また近年では,ケーシング壁面から計測した壁面圧力について時空間内挿を行うことで、ケーシング壁面の矩形領域における同一時間のデータを取り出す「同時面計測法(Syncronous Field Mesurement)」を新たに開発しました. この計測法により、旋回失速の初生及び成長過程における過渡的状態の流れ場を可視化して捉えることに成功しました(右アニメーション参照). さらに、旋回失速の初生に後置静翼の流れ場構造が大きく関係していることが、一昨年のCFDによる研究で明らかとなったため、静翼まわりの流れ場構造を実験的に把握するべく、昨年度には熱線による周期的多点抽出法を応用した新しい計測法を開発しました.その方法は、まず熱線の半径位置と熱線-静翼の相対位置を様々に変化させて、周期的多点抽出法により大量のデータを取得します.そして、データの後処理の段階で、動静翼の相対位置関係が等しいものをピックアップし全データを再構成することで、動翼の回転位相ごとに静翼の流れ場の情報を集めることができます.最後にこの情報をコンターマップにして可視化します.また、すべての回転位相に対してコンターマップを作成し、つなぎ合わせることでムービーにすることもできます. |
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CFD解析
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EFD計測(実験)から得られる情報量は物理的に限られており、翼間における複雑な非定常三次元渦流れ構造の詳細まで解明することは、ほぼ不可能です.
そのため本研究では、EFD解析で使用する供試軸流圧縮機動翼列を対象として、翼1ピッチにつき約150万点の計算格子に対して,スーパーコンピュータを用いた大規模な非定常RANS(レイノルズ平均ナビエストークス方程式)計算によるCFD解析(数値計算)を行いました この結果,EFD計測結果との相互検証によって、EFD/CFDのそれぞれの解析結果の妥当性を確認すると共に、EFD計測のみでは解析不可能な翼間流路内の渦構造を明らかとしました.(下アニメーション参照) |
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旋回失速セルのフローモデル
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以上のEFD/CFDハイブリッド流動解析結果から,旋回失速セルは翼負圧面から上流ケーシング面上に及ぶ竜巻状の剥離渦構造を有している(CFD結果:左アニメーション参照)ことが分かり,旋回失速セルについて右図に示すようなフローモデルが示されました.
すなわち,この剥離渦が翼流路で引き伸ばされ,これが隣接翼に干渉することによって隣接翼に前縁剥離を引き起こし,新たな剥離渦の発生を生じます(CFD結果:右アニメーション参照). これにより,剥離渦は連続的に翼間を次々と伝播する失速セルとして翼ピッチ間を旋回することが明らかとなりました. 旋回失速に関して,以上のようなEFD/CFD双方からの詳細な解析結果は世界的にも例がなく、本研究は国際的な先駆性を有していると言えます. |
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