光学的可視化を通じた流動場解析
Flow Analysis by Optical Visualization

研究概要

感圧塗料 (Pressure-Sensitive Paint: PSP) および感温塗料 (Temperature-Sensitive Paint: TSP) は、有機色素の酸素消光作用および熱失活を利用して物体表面の圧力や温度を可視化する計測手法です。これらは、色素の発光強度や発光寿命が表面の酸素分圧(空気の圧力に比例)や温度に依存する性質を利用した非接触計測技術であり、複雑な高速気流下における固体表面の圧力・温度場を高い解像度で取得可能という利点を有します。

PSPの原理
PSPの原理
TSPの原理
TSPの原理
PSPによる圧力分布計測の模式図
PSPによる圧力分布計測の模式図
PSPの発光:チューブから酸素を噴射すると発光が弱まる

一方で、現状のPSPは圧力だけでなく表面温度にも感度を有するため、圧力計測の定量性向上には温度の同時計測を通じた温度補正が欠かせないといった課題点があります。本研究室では、PSPとTSPを重ね塗りした「複層PSP/TSP (Dual-Layer PSP/TSP: DL-PTSP)」を用いて、TSPの併用による温度分布計測を通じたPSPの温度補正により、圧力計測の定量性を高めています。

DL-PTSP(複層PSP/TSP)の構造の模式図
DL-PTSP(複層PSP/TSP)の構造の模式図

サージングに伴う逆流現象の非定常計測

圧縮機の低流量運転下で発生するサージング(圧力・流量の周期的な激しい振動現象)は、逆流を伴う非定常なものであり、配管破損などの原因となります。本研究室では、前述のDL-PTSP (Dual-Layer PSP/TSP)を用いて、高速サージング発生時の圧縮機上流配管の非定常な温度・圧力変動をリアルタイムで光学計測する実験を行っています。なお非定常計測では、PSPやTSPの撮影画像に含まれるノイズの低減のために画像の平均化などの手法が使えないため、非定常撮影を行った画像に対して正規直交分解 (Proper Orthogonal Decomposition: POD) などのモード分解手法を適用し、ノイズ成分の除去および物理現象の抽出を行っています。

サージ試験装置へのDL-PTSPの適用の模式図
サージ試験装置へのDL-PTSPの適用の模式図

寿命法を用いた圧力・温度場計測の高精度化

PSPの発光強度は酸素圧力(および温度!)だけでなく、PSPが発光するためのエネルギーを与える照射光の不均一性や塗料の塗りむらの影響も受けるため、予め圧力や温度が分かっている条件(実験装置の静止時など)における「参照画像」との比を取り、これらの影響を除去する必要があります。そのため、PSPやTSPをプロペラファンなどの回転体に適用する場合、静止時と回転時における画像のマッピングのズレや、回転に伴うプロペラの変形による照射光の不均一性の違いが、PSPによる圧力計測に大きな誤差をもたらす問題があります。
この課題を解決するため、塗料の発光燐光の寿命が酸素圧力や温度に依存する原理を用いて圧力・温度分布の計測を行う寿命法(Lifetime Method)を用いる手法をDL-PTSPに適用し、照射光の不均一性や塗料の塗りむらの影響を低減させた圧力・温度場の同時計測手法を開発し、定量性の向上を試みています。

PSPによるファン翼面上の圧力分布計測における励起光照射の不均一性の影響
PSPによるファン翼面上の圧力分布計測・特に翼端の変形による励起光照射の不均一性の違いにより、本来の圧力分布より過大な分布となってしまう
寿命法に基づく温度・圧力の同時イメージング結果
寿命法に基づく温度・圧力の同時イメージング結果